こんにちは。マーニャです。
まだまだ雨の日は続きますが、晴れ間が見えるとセミの鳴き声が聞こえる季節となってきましたね。
貴重な晴れ間をうまく使っていきたいものです。
さて、今日は先日購入したプサルタリーについて少しずつ資料が集まってきたので、どんな楽器なのか少し歴史を掘り下げていきたいと思います。
資料が少なく、調査が甘いところもありますが、前回のラップハープ記事よりは内容を深めることができたと思うので、読んでいっていただければ嬉しいです。
▼ 前回の記事はこちら
プサルタリーの世界各地での呼び方
ラテン語ではプサルテリウムと呼ばれる、この楽器。
ハープのように何本もの弦が、直接共鳴箱の上に張られた楽器のことを言います。
各国での呼び方は以下の通り。
・ラテン語 プサルテリウム (psalterium)
・ギリシャ プサルテリオン(psalterion) ※「つまむ」という意味。
・ドイツ プサルタ(Psalter)
・イギリス プサルタリー(psalterly)
・フランス プサルテリオン(psaltérion)
※ここまでは「図解 世界楽器大辞典(黒沢 隆朝)」p.319.321を参照
・英語 サルテリー(psaltery)←よく検索で見られる表記
国によって発音が微妙に違いますが、どれも同じものを指すそうです。
検索した感じだと、今は英語表記の「psaltery」がよく使われている感じがします。
プサルタリーの歴史
こんな資料を見つけました。
ハープと同じく多数の弦を持つが、それを共鳴箱の上に直接張ってしまうという楽器にプサルテリウムがある。この楽器の歴史も確かに古く、旧約聖書の詩篇(プサルムス)を歌うときに用いられたため、詩篇にちなんだ名で呼ばれるようになったとも言われ、ダヴィデ王が演奏しているところを描いたものが中世の挿絵などによく見受けられる。
実際にはどれだけ古いものかなど、初期の歴史はほとんどわかっていない。その名の語源も、ギリシャ語の「ひっかく(プサロ psallo)」に由来するというのが、どうやら真相らしい。
金澤正剛 新版 古楽のすすめ p.134
確かに、何日か図書館に通って調べてもプサルタリーに関する資料は数冊…。なかなか謎の多い楽器です。
詩篇の作者の一人とされる、ダヴィデ王が使っていたということを考えると、ダヴィデ王の在位期間である紀元前1000年~紀元前961年には存在していたということになるでしょう。
歴史が長すぎて、きちんと記録が残っていなかったのかな?
ちなみに、詩篇・プサルムス(Psalms)というのは、旧約聖書に収められた神への賛美の詩のことだそうです。
ほとんどの詩が典礼(礼拝・奉神礼)に用いられた詩と神への感謝の詩に分類することができる。
(中略)
ラテン語で詩篇を意味する『Psalmi』は七十人訳聖書における詩篇のギリシャ語タイトル『プサルモイ』(心を動かすもの、複数形)に由来する。
フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 ”Psulm”より
元々は、ラテン語で「心を動かすもの」という意味のある言葉だったのですね。
神を称え、心を動かす詩…。
そこから名付けられた楽器と考えると感慨深いです。
せっかくご縁があって手に入れたプサルタリー、願わくば人の心を動かせる演奏ができるようになりたいものです。
進化するプサルタリー
このように、長い歴史を歩んできたプサルタリーも、時代の流れの中で姿を変えていきます。
結論から言うと、プサルタリーは最終的にピアノへ進化します。
えっ?ハープみたいな形してるじゃん!
きっと、そう思う方もいらっしゃいますよね。
キーとなるのは、ピアノにも使われている「ハンマー」です。
ざっくり言うと、プサルタリーは以下のように段階を踏んで進化していきます。
① 爪や鳥の羽で弾く(プサルテリウム)
② 弦をハンマーで叩くようになる(ハンマーダルシマー)
③ 鍵盤を押すとハンマーが弦を叩く装置を作る(クラヴィコード)
④ ピアノができる
確かに、ピアノもハンマーでピアノ線を叩いて音を出す楽器でした…!
プサルタリーの弦を叩こうと思ったのが、始まりだったのですね。
下に、この進化について書かれた資料を載せておきます。
プサルテリウムは爪弾いたり、プレクトラムで引いたりするのが常であるが、やがていろいろな形の撥で叩いて演奏する型のものが現れ、ダルシマーの名で呼ばれるようになった。さらに撥がハンマーとなり、それを鍵盤で操作するようになってクラヴィコードが出現し、最終的にはピアノへと発達した。
金澤正剛 新版 古楽のすすめ p.134.135
プレクトラムというのは、現代で言うピックや撥(ばち)のこと。
当時は爪の他に、鳥の羽の根本を使って弾いていたという話も読んだことがあります。
プサルタリーは、その繊細で素朴な響きが魅力的な楽器です。
しかし、その反面音量を出すのが難しく、半音が出せなかったり音域が狭いという難点もあります。
もっと幅広い音楽表現をしたい!という代々の音楽家や楽器職人の創意工夫の結晶が、現在のピアノなのでしょう。
数千年単位で進化を重ねた楽器なのだと考えると、感慨深くなりますね。
民族楽器として残る仲間たち
先ほど述べた、ハンマーダルシマーなどの楽器は現在も残り、民族楽器として愛されています。
引用だらけですが、こちらも関連する資料をご紹介しますね。
このプサルテリウムのような楽器はその後各地に伝わって民族楽器として人気を集め、さまざまな名前で呼ばれるようになる。西ヨーロッパではティンパノンと呼ばれていたのに対して、東ヨーロッパではツィンバロンとなって、鍵盤楽器のチェンバロの語源となった。映画『第三の男』で有名になったツィターもまた、同じ仲間に入る。
金澤正剛 新版 古楽のすすめ p.135
どうやら、地域によって呼び方が違うようですね。
せっかくなので、どのような形で残っているか順番にあげていきます。
ツィンバロン
チェンバロの語源にもなっている楽器です。
ハンマーで叩いて音を出すタイプで、ハンガリーを中心に東ヨーロッパで親しまれているそう。
ダンパーを改良した、コンサートツィンバロンというものまであるのだとか。
高速でチャルダッシュを演奏されているすごい方がいたので、動画をご紹介しますね。
初めて聴きましたが、ハンマーダルシマーよりピアノに音が近いような気がします。
ハンマーダルシマー
これも、撥で弦を叩くタイプの打弦楽器。
歴史は古いのですが、一説には10世紀頃に中東あたりで演奏されていたとか。
金属弦らしい、凛とした響きが素敵です。
最近よく聴いている奏者さんがYouTubeに演奏をあげているので、よかったらご覧ください!
ツィター
昔ビールのCMにもなった、「第三の男」で有名な楽器。
これは、爪で弾くタイプですね。ジャラジャラした音が陽気で好きです。
こちらも動画をご紹介したいと思います。
まとめ
以上、素人なりに資料を集めて調査したプサルタリーの起源についてのまとめでした。
読みづらいところもあったかと思いますが、いかがでしょうか。
歴史が古く、国ごとに呼び方が違ったり、進化の過程で派生した楽器があったりと、なかなか奥が深い楽器でした。
まさか、ピアノのご先祖様だったとは…!
まだまだ見つかった文献が少なく、情報が足りないところもあるので地道に調べていきたいです。
楽器の練習の方も頑張っていきたいと思います!
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